顧客様専用 WEB受付 入社・退社・扶養異動手続はこちら

人事労務ニュース

文書作成日:2024/07/11
最近注目が高まるカスタマーハラスメント対策

最近、カスタマーハラスメント(以下、「カスハラ」という)という言葉をよく耳にするようになっており、会社として対応が必要なことについて、社労士に相談することにした。

 最近、マスコミの報道でカスハラという言葉を耳にすることが増えてきました。会社としてなにか対応が必要なのでしょうか?

 法令では、セクシュアルハラスメント対策、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策、パワーハラスメント対策を行うことが義務付けられています。顧客等からの著しい迷惑行為(いわゆるカスハラ)については法令での義務付けはありませんが、カスハラを受けたという事案が増加している状況から、企業が対策を立てたり、東京都ではカスハラ防止条例を制定するような動きがあります。

 そのような動きがあるのですね。

 はい、急速に対策が進められています。今年5月、厚生労働省が令和5年度に行った「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書が公表されました。この報告書をみてみると、過去3年間に勤務先でカスハラを一度以上経験した割合は27.9%でした。各ハラスメントの相談件数の推移を見てみると、カスハラだけが「件数が増加している」の割合が「件数は減少している」より高く、それ以外(セクシュアルハラスメント・パワーハラスメント・就活等セクハラ)では「件数が減少している」の割合が「増加している」より高くなっていました。

 カスハラの事案は増加傾向にあることから、会社としても対策が求められているということですね。

 この機会に、厚生労働省から発行されているリーフレット「カスタマーハラスメント対策に取り組みましょう!」を見てみましょう。ここでは、以下のようなものをカスハラであるとしています。

「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」

 内容は理解できますが、個別の事案でカスハラに該当するかどうかの判断は難しいと感じますね。

 おっしゃるとおり、顧客等からのクレームが業務改善や新たな商品・サービス開発につながることもありますので、判断が難しいですね。リーフレットの中で「顧客等の要求の内容が妥当性を欠く場合」の例としては、企業の提供する商品・サービスに瑕疵・過失が認められない場合、要求の内容が、企業の提供する商品・サービスの内容とは関係がない場合が挙げられています。また、「要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当な言動」の例としては、身体的な攻撃(暴行、傷害)、精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言)、土下座の要求などが挙げられています。

 当社ではいままでカスハラの問題はありませんでしたが、会社の考え方を示したり、発生したときの対応方針を決め、従業員にその内容を教育しておくことが重要ですね。

 そうですね。カスハラを想定した事前の準備としては、以下の4つが挙げられています。

1.事業主の基本方針・基本姿勢の明確化、従業員への周知・啓発
2.従業員(被害者)のための相談対応体制の整備
3.対応方法、手順の策定
4.社内対応ルールの従業員等への教育・研修

 その上で、カスハラが起こった際の対応としては以下の対応が示されています。

5.事実関係の正確な確認と事案への対応
6.従業員への配慮の措置
7.再発防止のための取組
8.1〜7までの措置と併せて講ずべき措置(相談者のプライバシー保護のための必要な措置と従業員への周知、相談したこと等を理由として不利益取扱いを行ってはならない旨の定めと従業員への周知)

 なるほど。社内で考えてみたいと思います。

 会社の基本方針をホームページ等で公開しているような事例も出てきていますので、参考事例としてチェックしてもよいですね。また質問など出てきましたら、ご連絡ください。

>>次回に続く



 政府が2024年6月21日に策定した「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太の方針)の中で、カスハラを含む職場におけるハラスメントについて、法的措置も視野に入れて、対策を強化することが示されました。今後の動きを注視しておきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)
厚生労働省「カスタマーハラスメント対策に取り組みましょう!
厚生労働省「「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表します
内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2024

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。